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Joy to the World(2/3)
「なぁに?その大きな包み」
ガンマンにやって来た淳と義武、そして義武が手にした(大きいので結局義武が持ってくれていた)ツリーの包みに目を留めたまりあがそう尋ねた。
「途中で義武が買ってくれたんです。クリスマスツリー」
「へぇ~大きいの買ったわね~」
店内に置いておくと邪魔になるので、義武は着替えるついでに包みを抱えて店の奥へと入って行った。
「なんだかわかんないうちに奢ってもらっちゃって…」
お馴染みのカウンターに腰掛けると、淳は店でのやりとりをまりあに話して聞かせた。
「あはは、義くんてそういう感じよね~。なんていうか天然?そうやってナチュラルにやるから、女の子をその気にさせちゃうんじゃない。しかも自覚がないところが罪作りよね~」
でも淳ちゃんはその気になっていいからね~、と笑うまりあだった。…だが淳はよく意味がわかってない模様である。
「クリスマスももうすぐよね~。パーティ来れるよね?楽しみにしててね」
「はいっ!」
クリスマスはここ喫茶ガンマンでパーティをやると聞いて、淳はずっと楽しみにしていたのである。
さて、かつての暴走族「ガンマン」のメンバーたちが集まる喫茶ガンマン恒例クリスマスパーティの目的は、言うまでもなく『まりあさんと一緒に楽しいクリスマス!!』…である。
ガンマンで催される「ガンマン」メンバーたちの集いはすべて、目的は“まりあさんと一緒に”の部分にほぼあると言ってよい。
そんな彼らなりにもルールがあり、まりあさんにプレゼントは禁止(通称・抜け駆け禁止協定)、トップとまりあさんの邪魔は厳禁(名付けて、まりあさんの恋路を守ろう友の会)…というのが主なものである。
そんなわけで、コワモテバイク野郎が集うクリスマスパーティは、至って健全な、トップと主に義武の手からなる料理とケーキを堪能しつつ、みんなのアイドルまりあさんとの歓談を楽しむためのものなのである…。
25日、クリスマス。
夜8時を回ると喫茶ガンマンは閉店し、貸し切り状態でクリスマスパーティに突入した。
義武は営業中からこっそり焼いていたケーキのスポンジにデコレーションをしはじめ、マスターは義武に指示を仰ぎつつローストチキンをこさえはじめた。
まりあは店内にパーティの飾り付けをはじめ、淳も見ているのもなんなのでそれを手伝いはじめる。
そうしているうちに元ガンマンのメンバーたちの第一陣がやってきた。
「メリークリスマス!トップ、まりあさんお久しぶりっス!義坊、料理はどうだ?」
店内は急にがやがやと騒がしくなる。
メンバーたちは主に酒を持ち込み、グラスの準備など手伝いながら義武の作る料理をこっそり窺ったりしている。
「あっれ~?この子は?見ない子だね、義坊の彼女?」
メンバーの一人が淳に気付いてマスターに問い掛けた。いや、みんな気付いていたのだろうがなんとなく言い出せなかったのだろう…。
「おう、手を出すなよ」
「違いますよ。そんなんじゃありません。言ってみれば大屋さんみたいなもんです」
にやにやと断言したマスターをたしなめるように、義武は反論してみせた。
「さて、ケーキが出来ましたよ!」
義武の作り終わったケーキをまりあがテーブルへと運ぶ。豪華に飾り立てられた大型ケーキに歓声が上がった。
第二陣が到着する。
料理もだいぶ準備が整ってきた。
クリスマスパーティがようやくスタートした。