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Joy to the World(1/3)
「じゃ、新学期にな~」
「よいお年を!」
そんな挨拶が交わされて、生徒たちは次々に学校を後にする。
12月22日、終業式。
ついに冬休みスタートである。
「休みとか言っても宿題があんなに出るんじゃ学校行ってるのと変わらないよね」
初めての長期休暇と大量の課題を前に、淳はなにやら釈然としない面持ちで隣を歩く義武に話し掛けた。
バイトに行く義武にくっついて、淳も一緒にガンマンに行くことにしたのである。義武のバイトがわりと遅くまである時は、そうして夕食をガンマンでとってしまうことが多かった。
「でも課題さえ済ませちゃえばあとはのんびりできるよ。ま、頑張ろう」
クリスマス一色の街を歩きながら、淳はふと一軒の雑貨屋の前で足を止めた。
ウィンドウにはいろいろな大きさのツリーと、ぬいぐるみやらキャンドルやらが飾られている。
「…そういえばウチ、ツリーないよね。ねぇちょっと見てっていい?」
バイトまで時間があることを確認し、義武は楽しそうな淳のあとに続いて店に入っていった。
女の子の好きそうな雑貨が所狭しと並んだ、可愛い店である。義武はなんとなく肩身の狭い思いをしながら、ツリーが並んでいるあたりについていった。
「へぇ~白いツリーとかもあるんだ。でもやっぱり緑の方がいいよね。わ~見て見て!このクマ可愛い!」
大きさも様々ながら飾り付けの雰囲気も様々なツリーを前に、義武はしまい込んで埃を被っているであろう自宅のツリーのことを思い出した。
毎年、妹の由希が12月に入ると引っ張り出してきて、リビングに飾っていたっけ…。
両親が正式に離婚したのは2年前だったが、それ以前からそれぞれ子供を連れて別居していたので、最後にそのツリーを飾ったのは一体何年前だっただろう…?
クリスマスになるとケーキを食べにやってきた妹のことを思う…永遠に癒えない傷を負わせてしまった、たった一人の妹―…。
今年のクリスマスは、彼女のケーキは作らない。…否、作れない。
「…け…義武?」
淳の声に義武ははっと我に返った。
「もう、どうしちゃったの?ボケッとしちゃって」
「あぁゴメン。どう?いいツリーあった?」
沈みかけた気持ちを奮い起こして、義武は淳に尋ねた。
「うん、このくらいがいいかなぁ~あんまり小さいのも寂しいし。やっぱりいろいろ飾りつけのし甲斐があるほうがいいよね。どう?」
そういって淳が指し示したのは、130センチくらいの高さのツリーだった。
「じゃあそれにしよっか…ちょっと待ってて」
淳がそこで待っていると、義武はテキパキと店員を連れてきて、梱包してもらった。
そしてクリスマスギフト用の包装を施された大きな包みを受け取ってくると、義武は
「じゃあちょっと早いけど、クリスマスプレゼント」
と言って、淳にツリーを手渡したのだった。
「え…ええ…っ、義武いいよっ自分で買うよ!」
「いいっていいって、淳にはお世話になってるわけだし、このくらいはさせてよ」
むしろお世話になってるのは自分のような気がしてならない淳だが、義武は頑として譲らないのだった。
「………じゃあ貰っちゃう。ありがとう!」
大きな包みを抱え込み、淳は嬉しそうに微笑んだ。