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「では!恒例に乗っ取り、トップに乾杯の音頭をとっていただきましょう!ささ、トップ!」
「だから、トップって呼ぶのはいい加減やめろよな〜おまえら」
メンバーたちが持ち込んだシャンパンをグラスになみなみと注いでもらいながらマスターは言った。
「さて、みんな今年も集まってくれたな!それじゃまぁ思う存分飲み食いしてってくれ。乾杯!」
マスターのあっさりとした音頭に、カンパ〜イ、とみんながグラスを傾ける。ちなみに淳と義武はジュースである。
乾杯を済ませると義武はまたしてもケーキを作り始めた。今度はどうやらチョコレートケーキらしい。
「相変わらずいい腕してるなぁ義坊!イチゴのケーキいけるぜ」
顔に似合わず甘党らしいリーゼントのお兄ちゃんが義武に話し掛ける。側らで聞いていた淳はふと気になって尋ねてみた。
「義坊、なんて呼ばれてるんだね、義武」
「こいつ、俺らと知り合った頃は今より15センチは低かったんだぜ、身長。それがまぁ中学出る頃にはこれだけ伸びちゃって…成長期って怖ぇよなぁ〜」
チョコレートをかけながら、もっと伸びた同級生もいましたよ〜などと義武は答えている。
「まったく頭にくるわよね〜あたしがどんなに頑張ったって1センチも伸びなかったっていうのに、義くんなんて雨後の筍みたいにぐんぐん伸びちゃってさ。ずるい!!」
グラスを片手にしたまりあが話しに加わった。
「まりあさん、飲み過ぎてないです?明日も仕事でしょう?ほどほどにしておいたほうがいいですよ」
「大丈夫大丈夫、あたしお酒は強いもん。それよりてるちゃんのほうが心配よね。酒好きなのにお酒に弱いんだもの」
そう言われてマスターのほうを見てみると、すっかり出来上がっているように見受けられた…。
「淳ちゃ〜ん、飲んでる?ま、一杯一杯…」
いつになく調子のよいマスターが淳にお酌をはじめてしまった。
「もう!てるちゃん酔ってる!!」
「マスター!未成年に勧めないでくださいよ!」
「はははは堅いこと言うなって!じんぐるべぇ〜るじんぐるべぇ〜るすっずが〜なるぅ〜〜っと」
「マスター……音痴なんだから…」
鼻歌交じりになりながら、メンバーたちがいるテーブルに向かっていくマスターを見やって、やや呆れ気味に義武は唸った。
「え?今のって歌だったの…?」
呆気にとられた淳が義武の言葉にある意味失礼極まりない反応を示した。
「そうだよ、ジングルベル」
「へぇ〜そうか、そういう歌詞になるんだ」
淳は当然というか、クリスマスソングも英語でしか知らない。
「じゃあ“ジョイ・トゥ・ザ・ワールド”は?」
「英語でタイトル言われてもオレはよくわかんないな…歌ってくれればわかるけど」
義武がそう言うと、淳はやや緊張気味に歌ってみせた。
「Joy to the world,the lord is come〜let
earth receive her king…」
「あぁそれは“もろびとこぞりて”だね」
「な…なんかよくわかんないタイトルだね…古文みたい」
期末試験で赤点を取ったためにどっさり出された追加課題のことを思い出し、淳はちょっとぞっとした。
「あはは、確かにちょっとそれっぽいよね。それにしても……淳も案外…音痴だね」
「う……っ」
義武の率直な言葉に淳はちょっと反応に詰まってしまった。
「日本語だとこうだね。もーろびと〜こぞーりーて〜主はー来まーせり〜」
「や…やっぱり古文くさい…」
「義くん歌上手いわよね。保父さんになれるわよ」
「それ危険だよまりあさん。園児を無自覚に誑し込んじまうぜ、こいつ」
「それはマズいわね〜」
そうしてみんな、陽気に笑い合う。
店内を見回すと。
酔っ払ったマスターが、同じく酔っ払ったメンバーと飲み比べをはじめている…それを止めるほかのメンバーたち…料理のにおい、グラスのなる音…。
どれもこれもが淳には初めての騒々しさで。
クリスマスはいつも、母親と、幼なじみとも言える男装の親友と、3人で。
(こんなにわいわい騒ぐのって初めて…)
アメリカにいる母と晶は、どんなクリスマスを送っているんだろう…。
願わくば。
ジョイ・トゥ・ザ・ワールド―世界に喜びを。
愛する人たちが、幸せでありますように。
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