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父たちの肖像(2)
瀬川武弘は小学校時代からの友人で、武術の師匠である瀬川藤吉郎氏の息子だ。
武弘はガキ大将タイプで、乱暴粗雑で女好き…私とはあまり共通点のない男だが、なんとなく腐れ縁で交友が続いている。
私は彼の裏表のない豪快な部分には好感をもっているが、女性に対するだらしなさにはちょっと眉をひそめずにはいられない。
武弘は案外寂しがり屋なので、常に誰かに側にいて欲しいのだろう…それはわかる…それはわかるが、だからと言って妻以外の女性と関係を持つのが許されるわけはない。
奥さんも…そして子供たちも傷ついているのだ。
彼の子供たち…義武くんと由希ちゃんには、師匠のところでよく会った。
由希ちゃんは人見知りする子で、私が訪ねていくとさっと奥に隠れてしまったが、義武くんはきっと父親を恋しがる部分があったのだろう、武弘と同い年の私によく懐いてくれていた。
年齢以上にしっかりした子で、師匠曰く「教え子の中では二番目くらいに筋がいい」とのことだ。
頼もしい話だ。
彼の成長ぶりを目にするたびに、私はまだ見ぬ娘たちの姿に思いを馳せたものだ。
彼女たちはどう成長しているだろう…きっと祥子に似て、優しく、美しい少女になっていることだろう…と。
「そういえば洋、ウチの息子が世話になってるらしいな」
物思いにふけっているとき突如ズバッと切り出され、しかも内容が内容なだけに、私はさすがに少々戸惑ってしまった。
「…なんの話だ?」
まさか知ってしまったのだろうか…?義武くんが私の家にいることを。
「とぼけるなよ。俺に隠しておくように義武に頼まれたのか?あいつ、おまえんちにいるんだろ?」
隠していたことを怒っている風ではないが、どうやらすべてバレてしまったらしい。一体どこから漏れてしまったのだろう…。
「やれやれ…義武くん、知られたくなさそうだったから黙ってたんだけどな。誰に聞いたんだ?武弘」
「おまえの娘」
武弘はあっさりと言ってのけた。
………なんだって?
ちょっと待て…ちょぉ~っと待て!!!!
「会……ったのか?淳に…?」
「そう淳ちゃん。か~わいい子じゃないか」
にやりと笑みを浮かべる武弘…ゆ、許せん…!!
私だってまだ直接会ったことがないというのに、会ったばかりか言葉まで交わしたというのか、こいつは!
羨ましすぎるぞ…っ!!
……目の前でにやける武弘に、私は激しく嫉妬した。