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WELCOME、NEW LIFE(3/3)
食事を終え、食器類を片付けたのももちろん義武だった。
はじめ淳に洗わせてみたのだが、手つきが怪しく、すぐさま食器を割ってしまいそうで恐ろしくて見ていられなかったのだ…。
だがしかし。
これで決心がついた。
義武は少し迷っていたのだ、果たしてどの程度まで自分が家事をすればよいのか。そもそもが淳の家であるのだから、あまりでしゃばるべきではないのではないか…と。
しかし淳のあの不器用さ…どうやら本気でまったく家事ができないらしい。
となれば、家事全般仕切ってしまっていいわけで。
食事も、掃除も、洗濯もなにもかも、思い通りやっていいということで…。
(……よし)
ひそかにやる気がむくむくと膨れ上がる義武は、まさに根っからの家政夫人間であった…。
「片付け終わったー!」
ふぅ~っと一息つきながら淳は2階から降りてきて、リビングの義武の元へやってきた。
「ちゃんと洋服はたたんでしまった?」
「うん、なんとか。あぁ汗かいちゃった。シャワー浴びていい?どこ?」
「案内するよ。と、その前に淳、お互いいやな思いをすることなく生活するためにある程度ルールを決めておこう」
「ルール?」
きょとんとした顔をしながら、淳はソファに座る義武の隣に腰を下ろした。
「まず家事のこと。オレは沢村さん…淳のお父さんにも頼まれてるし、得意だから掃除も洗濯も料理もなんでもやる」
「うん。それは凄く助かる」
真剣な顔をして淳は合いの手を入れる。
「だけど、淳にもやって欲しいことがある。というか、まぁこれは当たり前のことだと思うけど、自分の部屋は自分で掃除すること。オレは淳の部屋には一切入らないから」
「え?なんで入らないの?」
「それが節度というものです。仮にも女の子の部屋にずかずか入るわけにはいきません!」
「ふ~ん、そういうものなのか~」
どことなくズレた受け答えをする淳…。
「それから、洋服の洗濯はするけど、下着は自分で洗って自分で干すこと」
「ふむふむ…」
「まぁさしあたってはこのくらいかな。あとはなにかあったら追加するよ」
「うん、わかった!それじゃ掃除の仕方と洗濯の仕方、教えてね!」
「………」
淳の力いっぱいのセリフに、言葉を失う義武であった…。
そんなわけで、実は義武はほとんど淳の部屋に入ったことがないので、中がどうなっているのか知らない。
ちゃんと綺麗に片付けているのか、散らかりまくっているのか…とりあえず掃除の仕方も(恐ろしいことに彼女は掃除機の使い方を知らなかった…)、洗濯の仕方も(洗濯機の回し方もまた然り)一通り教えておいたので、それをやるかやらないかは本人次第だ。
料理も多少は覚えたほうがいいのでは…と、初めはいろいろ教えようとしてみたのだが、危ない手つきがどうにも気になってしょうがないので、結局挫折してしまった。
(ま、いいか)
ようは自分がやれば、淳は困らないわけだし。
義武はあっさりと判断を下した。
かくして、義武の家政夫生活が始まることとなった。
それはもう、すこぶる順調に。
こののち、沢村家にはさらに一人同居人が、しかも淳以上に家事をやらない(できるかもしれないが、やる気がまったくない)同居人が加わることになろうとは、義武はもちろん考えもしなかったが…。
…合掌。
~The END~